糖尿病とは

糖尿病とは血糖値(血液中のブドウ糖の量)が高くなる病気です。
健康な人の場合血糖値が高くなると膵臓からインスリンというホルモンが分泌され血糖値が下がりますが、糖尿病の人では膵臓からのインスリンの分泌やインスリンの作用が不十分であるため、血糖値が高いままとなってしまいます。
血糖値が高い状態が続くと全身の血管を障害して合併症を引き起こします。
糖尿病治療の目的は血糖値を下げて合併症を起こさないようにすることです。

糖尿病の主な合併症

・神経障害
(両足のしびれ、立ちくらみ、など)
・網膜症
(眼底出血、視力低下→失明)  
・腎症
(たんぱく尿、腎不全→人工透析)
・心筋梗塞   
・脳梗塞    
・足壊疽
(足がくさる→足切断) 

糖尿病の症状

糖尿病の初期では症状はほとんどありません。
健康診断や別の病気で受診した際にたまたま血糖値が高いことを指摘されることがほとんどです。
血糖値がよほど高くならないと全く症状がないまま合併症が進行してしまう、これが糖尿病の恐ろしいところです。
血糖値が高くなると以下のような症状が出ます。

多尿

血糖値が高くなると尿に糖が出るようになり、同時に水分も一緒に出るため尿の量が多くなります。

のどが渇く

多尿のため体は脱水状態となりのどが渇きます。

水をたくさん飲む

のどが渇くため水分をたくさん飲みます。
※清涼飲料水やジュースなどの糖分が入った飲み物をたくさん飲むとさらに血糖値が上がり倒れてしまいます(ペットボトル症候群)。
のどが渇いた時は水かお茶にしましょう。

体重減少

インスリンの分泌や作用が低下すると筋肉や脂肪の量が減り痩せてきます。

血糖値

朝食前の血糖値の正常範囲は110(mg/dl)未満です。
食後の血糖値の正常範囲は140(mg/dl)未満です。
これより高い血糖値は異常と言えます。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)

赤血球の成分であるヘモグロビンと血液中のブドウ糖が結合したものが
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)です。
血糖値が高いほどHbA1c(%)が高くなります。
HbA1cは過去1-2カ月の平均的な血糖値を反映します。

糖尿病の診断

朝食前の血糖値が126(mg/dl)以上、または食後の血糖値が200(mg/dl)以上で、HbA1cが6.5%以上であれば糖尿病と診断されます。

糖尿病の原因

糖尿病は原因により以下の4つのタイプに分類されます。

①1型糖尿病

若年者に多い。膵臓のβ細胞が壊されるため自分でインスリンが作れなくなります。

②2型糖尿病

中高年に多い。肥満や運動不足などによりインスリンが効きにくくなります。

③その他の原因による糖尿病

膵臓や肝臓などの他の病気や薬剤が原因となって糖尿病となります。

④妊娠糖尿病

妊娠中だけ血糖値が高くなります。

血糖コントロールの指標

血糖コントロールの判定は主にHbA1cを用いて行います。
年齢、糖尿病になってからの期間、などにより人それぞれHbA1cの目標値は異なりますが、一般的に合併症の進行を予防するためにHbA1c 7.0%未満を目標とします。

血糖コントロール目標

糖尿病の治療

食事療法

食事療法はすべての糖尿病患者さんに必要です。
食事療法を守ることで血糖のコントロールが良くなって、内服薬やインスリンの使用量が減る場合もあります。
逆にいくら内服薬やインスリンを使用しても、食事療法が守られなければ血糖のコントロールはできません。
食事療法の基本は、体格や身体活動量から計算した適正なカロリー摂取と、1日3食バランスよく食べることです。
栄養素の配分は、1日の総カロリーの約50~60%を炭水化物、約20%をたんぱく質、脂肪は25%以下とします。
これは日本人の伝統的な食生活と同じものです。
1型糖尿病ではさらに食事中の糖質を一定にするよう心がける必要があります(基礎カーボカウント)。

運動療法

食後に運動をすると筋肉でブドウ糖の利用が増加するため食後の血糖上昇が抑えられます。
また運動を継続することで内臓脂肪が減るとインスリンの働きが良くなって血糖コントロールが改善します。
食事療法と運動療法を組み合わせることで筋肉量を維持したまま痩せることができ、太りにくい体となります。
運動の種類としては、散歩、ジョギング、自転車エルゴメーター、水泳、などゆっくりと十分に息を吸い込みながら全身の筋肉を使う有酸素運動が適しています。
これらの運動を1回10~30分、週3~5回以上行います。
運動の強さは、成人では脈拍数が1分間に120くらい、高齢者では1分間に100くらいで、感覚的には他人とおしゃべりしながら続けられる程度の強さです。
忙しくて運動をする時間がない人は、バスを1駅手前で降りて歩く、エレベーターの代わりに階段を使う、など日常生活に運動を組み込むのがポイントです。
あまりにも血糖コントロールが悪い人や糖尿病の合併症が進行している人など、運動療法を行わない方がいい場合もあります。

薬物療法

食事療法と運動療法だけで血糖のコントロールが良くならなければ内服薬や注射薬による治療が必要となります。
肥満の程度や膵臓からのインスリン分泌量を判断して、内服薬か注射薬による治療法を選びます。

内服薬の種類

①DPP-4阻害薬

腸管からのインクレチン(膵臓からのインスリン分泌を促進するホルモン)の分解を防ぎ、インスリンの分泌を増強します。

②ビグアナイド、チアゾリジン

インスリンの働きを良くします。

③αグルコシダーゼ阻害薬

腸管からの糖の吸収を遅くします。

④SU薬、速効型インスリン分泌促進薬

膵臓からのインスリンの分泌を増やします。

⑤SGLT2阻害薬

血液中の過剰な糖を尿中に排泄することで血糖値を下げます。
およそ80gのブドウ糖が尿に排泄されるため約300kcal消費します。
よって体重を減らす効果があります。

注射薬による治療

代表的な注射薬はインスリンです。
インスリン以外の注射薬として、インクレチン作用を強めるGLP-1アナログ製剤があります。

①インスリン

はじめて糖尿病と診断された時に、尿ケトン体陽性でインスリン不足による著明な高血糖状態の時はインスリン治療が必要です。
2型糖尿病の方で内服薬を使用しても血糖コントロールが不良な時にインスリン注射を開始します。膵臓からのインスリン分泌が枯渇する前にインスリン注射を開始する必要があります。内服薬とインスリンを併用することで血糖コントロールが改善します。
1型糖尿病ではインスリン注射が必須です。

②GLP-1アナログ製剤

膵臓のβ細胞に働きインスリン分泌を促進する注射薬です。
胃の動きを抑えることで食欲を抑制し、体重を減らす効果もあります。